独身時代、勤めていた会社は博多中州の電停に近いビルにあった。昼食後は、同僚とかならず「喫茶店」にはいり、退社後の一杯をどこの飲み屋さんにしようかなどと雑談するのが日課であった。その「喫茶店」では、まわりに合わせて決まって「コーヒー」を飲んだが、私は好きではなかった。
またその頃は、今ほど「禁煙の害」が強調されていなかった。「嗜好品は嗜好品を呼ぶ」で、煙草を覚えたのもこの頃であった。あれから40年ほどがたった日本ではいま…「禁煙」と「煙草の値上げ」というアメリカからの伝染病に汚染されている。
公共の建物やレストランは勿論のこと、 喫茶店やカフェにもその広がりをみせ、いまに公園や海岸をもがその対象になろうとしている。
そうした禁煙の渦に巻き込まれて私は、半年前に煙草を手放した。
60歳も限りなく後半になって、妻と二人きりになる時間が増えた。喫煙をしていた頃の習慣で今も、日常の買い物のあとなどに、かならずカフェでひと休みをしている。煙草を吸っていた頃は、喫煙が許されている「喫茶店」や「カフェ」 を探しまわって入った。それが今は、コーヒーその物を味わいながらひと休みしたいがために、禁煙のお店を探して利用している。…そうだ、やっとこの歳になって、カフェの楽しみ方に気づいたのである。
コーヒーをマグカップでがぶがぶ飲むと、どうも胃が重く感じられて嫌だ。薄いコーヒーなら胃への負担も少ないが、生憎私は濃いコーヒーが好きだ。数年前、イタリアを旅行したことがある。トイレを借りたい思いから、立ち飲みのカフェに飛び込み、初めて飲んだコーヒー…その味といい、その量といい、私にぴったりだったのである。なので、それ以来ずうーッと「エスプレッソ」なのである。
今の私達夫婦の暮らしには、カフェはなくてはならないものとなっている。ちょっと頭の中を整理したり、少なくなりがちな夫婦の会話を取り戻したり、また…買い物の疲れをいやす時などに大変お世話になっている。これが日常的になると、コーヒーの値段はけっして安くはないが、あの居心地のよい空間を提供してくれることを考えれば、私達の暮らしに潤いをあたえてくれるカフェは、とても大切な存在である。
禁煙間もない私が言う言葉ではないが….カフェの室内が、禁煙であることが嬉しい。もう、あの煙草の臭いが鼻につくようになっているのだ。カフェを利用する良さは、色々とある。
この中には、快い都会的な喧噪が漂い、その適量の刺激を吸収することが出来る。人々の話し合う声であったり、雰囲気を壊さない程度の音楽が流れていたり、時々は人間観察が出来たりと、それらの刺激によって、私達はリフレッシュさせて貰っている。
日々、充実して暮らすためにはどうすれば良いのか?…ぐらんぱ・ぐらんまと呼ばれる私達夫婦には、それらを探しまわることが日課なのである。そのためには、老いた頭を何とか使って、その何かを探し出さなければならないと思うのである。それには、せかせかと走り続けず、心に余裕を持つことが大切な気がする。…私達が大好きな詩がある。
「立ち止まって考える時間がなければ、人生とは何なのか」
…William Henry Daviesの詩
もう100年前に書かれた詩というけれど、とても新鮮に感じる。この詩が言っているように、時には立ち止まって後ろや周りを振り返ってみる。あるいは、これからのことをゆっくり考えてみるなど…そんな余裕がなければ、何のためにこれまでを生きて来たのかと言うことになる。そうしたことを考える場所のひとつとなっている「カフェ」の存在は、本当に嬉しい存在だと思っている。
ついでに言うと、ドトールは私達のような高齢の方が多く、その多くの方が喫煙者でいらっしゃる様子。その反面、スターバックスには、上手にゆったりと過ごす若い世代の人たちが数多く、国際色が豊かでいい感じである。どちらが良いとか悪いとかを言うつもりはないが、スターバックスには独特の雰囲気があって、日本ではない…なんだかアメリカを楽しんでいるような感じがする。
カフェは、その昔の喫茶店とはちょっと違う…適切な表現が出来ないが、ある種「人びとの避難場所」?…みたいなものを提供する店へと変わってきたようにも感じる。私も、ちょっと立ち止まって「考えることを求められる場」としてのカフェの方が居心地が良いと感じている。
今の若い人達の中には、日本の伝統文化を見つめ直して、新しい和洋折衷のカフェを作り出そうとしているとも聞いたことがある。すでに抹茶をだすカフェもあるそうだ。抹茶を注文すると、お茶うけの和菓子までついてくるとか。…いいかもしれない。
今日、私達のお気に入りのカフェ「SLOWHAND」を訪れた。私の注文は決まって「エスプレッソ」…とても美味い ! 。
このお店の写真を、私のブログの最初の投稿に掲載したいと、このカフェのオーナーであるご夫婦に相談した。
すると、気持ちの良い笑顔のOKが返ってきた。「私のブログの初投稿を楽しみにしていま〜す」とおっしゃる。
いよいよ何とかしなくてはならないと高まるプレッシャーを感じながら、この店をあとにした。
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